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任意売却という言葉が正しく使われていない

All about Pro File というサイトがあります。一般の方からの質問にたいして、その道の専門家が回答してくれるというものです。専門家の回答ですから、みなさんがそこに書かれていることを信用されると思いますが、中には首をかしげざるを得ないものもあります。

影響力が大きいと思われるので、これを放置すると誤解が独り歩きしかねず、問題点を指摘しておきたいと思います。名指しして批判する以上、いい加減な指摘で済ますわけにはいきません。少々長文になりますが、ご容赦ください。

http://profile.allabout.co.jp/ask/a-129921-129945/

これは、投資用マンションを所有されている方が返済に困り、任意売却を検討したいが、ローン会社との契約が「繰上返済を認めない」となっていることから、任意売却が認められないのではないか? というお尋ねにたいしての回答ですが、その内容はわかりにくく、かなり誤解を招くものになっています。

まず「任意売却による一部繰り上げ返済なんぞは、ありません。」という断言です。ローン返済期間中に定期的な支払いとは別に行う追加的な繰上返済のことを指して、それとは違うということをおっしゃっているのだと思いますが、それは言葉の定義が異なっているからで、質問者が「根本的に考え違いしている」というには当たりません。逆に、回答者が質問者の意図を取り違えています。

任意売却は、物件を処分することによって、債務の一部を繰り上げて返済することにほかなりません。ただし、期限の利益を喪失した後なので「繰り上げ」という表現は適切ではないですが、質問者がそのように理解していることは容易に読み取れます。

任意売却代金の残債務への充当は、繰上返済には当たらないこと。したがって、繰上返済ができないことを定めた条項は適用されないことを説明すれば足ります。

次に「任意売却をしたら全額返済が原則です。」という断言です。「借りたものは返さなくてはならない」というごく当たり前の道徳的なことを書かれているのか、「全額返済しなければ、任意売却は行えない」ということを書かれているのか・・・これも「原則」という言葉をどう定義されているかが不明で、言いっぱなしでは意味がわかりません。つまり「守るべき」ことを意味しているのか、「例外がある」ことを意味しているのかがわからないのです。

むしろ、全額返済ができないから、任意売却を行うことになるのが普通です。多くの金融機関は、ローン返済が滞って抵当権の行使を検討する際、まず任意売却を検討し、強制競売は最後の手段と受け止めています。ですから「認めてもらうにはそれなりの説得が必要です」という記述は、大いに誤解を招くものです。

続いて「まあ任意売却に応じてくれなければ競売をするしかないと言えば、金融機関は何かしら相談に応じますけどね。」とありますが、競売を申し立てるのは債務者ではなく、債権者=金融機関のほうです。「金融機関が任意売却に応じるように追い込む」という意味合いでそう記述されているのではないかと思いますが、読み手は一般の方なので、やはり誤解を招く表現と言わざるを得ません。

そして、任意売却を行うために、3つの選択肢を挙げられていますが、実務的にありえないことや、やはり誤解を招く表現が使われています。

まず「1)自分で金融機関の任意売却交渉をする」とありますが、これは金融機関がまず認めません。素人である債務者から「この物件は500万円でしか売れないので、債務が1000万円残ります。でも、売っていいですね?」などと言われて「はい、わかりました」という担当者はいません。なぜ500万円でしか売れないのか、客観的な証明が必要で、仮に債務者本人にその調査能力があったとしても、その調査内容の信用性についての担保がありません。

もっとも、金融機関側から提示された売出価格で売買契約を締結するなら、特に問題はないかもしれません。しかし、それは「金融機関との交渉」とは言わず、金融機関からの指示に従っただけのことです。

次の「2)任意売却業者や不動産業者に手数料を支払って交渉してもらう」という点は、大いに誤解を招く表現です。任意売却業者は、売買代金の中から支払われる仲介手数料の配分を収益源としており、交渉そのものの手数料を受領することはありません。金融機関側も、媒介契約を締結している業者であることを確認したうえで交渉に応じており、そのような手数料を受領することは違法である可能性もあります。

「結局、かたちはどうであれ仲介手数料を払うんだから、手数料を払って交渉してもらうことには違いない」とおっしゃるならそのとおりですが、やはり読み手は一般の方なのですから、任意売却の依頼にあたっては、交渉手数料の支払いをあらかじめ準備しなければならない、と誤解されてしまいます。

そして最後に「あれ?」と目を疑う選択肢が現れます。「3)手っ取り早く借入金返済を止めて、自動的に競売コースに乗せる」という選択肢です。ということは、これ以外の 1)と2)では、借入金返済を継続していることが前提のようです。それでは、そもそもの前提が違ってきます。それは「任意売却」ではなく、今まで何のお話をしていたのかがさっぱりわからなくなってしまいます。

ここでぐるっと一周して、初めの「任意売却をしたら全額返済が原則です。」と書かれていた意味が、なんとなくわかってきました。ここでは、ローンの返済が継続している前提だったのですね。それでは、売却が認められるはずがありませんし、金融機関にいくら話し合いを求めてもムダです。競売にしてやると脅そうが、どんなに優秀な代理人を立てようが、それに応じることはありません(金融機関が「相談に応じる」のは、情報収集が目的であって、結論は初めから決まっています)。

この回答全体を覆う問題点は「任意売却」という言葉が正しく使われておらず、質問者は任意売却についての質問をしているのに、回答者がそれに答えず、そもそもの前提が咬み合っていません。

期限の利益を喪失し、抵当権の行使としての強制競売にたいして、裁判手続によらない売却方法として「任意売却」と呼んでいるものですから「ローンの返済を継続したままの任意売却」はありえません。およそ取引というものはどれも任意ですから、八百屋さんが大根を売るのも「任意売却」なのかもしれませんが、そのような言葉の使い方はしないのです。

結局、任意売却についての質問・回答であるにもかかわらず、その中身はまったく空っぽです。任意売却の現場に立ち会われたことがなければ、まったくご存じないのは無理からぬことと思いますが、根本的な考え違いがある、と言わざるを得ません。

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